株式会社三菱総合研究所

路線バスに「顔パス」乗車。都の「顔認証キャッシュレス決済実証」を支えるDGFTの決済基盤

路線バスに「顔パス」乗車。都の「顔認証キャッシュレス決済実証」を支えるDGFTの決済基盤

事前に顔写真とクレジットカードを登録すれば、バスに乗車する際に端末へ顔を向けるだけで決済が完了──。東京都が2026年2月から関東バスの一部路線で実施した「顔認証キャッシュレス決済」の実証実験は、公共交通のあり方を変える新たな決済体験として注目を集めています。
財布もスマートフォンも取り出す必要がない「手ぶら移動」の実現は、利用者の利便性向上にとどまらず、乗務員不足や現金取り扱い負担といった、公共交通事業者が抱える深刻な課題を解決する糸口としても期待されています。この実証の決済基盤として活用されているのが、DGFTのマルチ決済サービスです。

今回は、東京都から本実証を受託した株式会社三菱総合研究所の村山 隆芳様に、実証の狙いや背景、DGFTの決済基盤を採用した理由、今後の展望を伺いました。

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  • インフラ・都市政策本部 次世代インフラ事業推進グループ 主席研究員 村山 隆芳 様

DGFTのマルチ決済サービスの活用方法

  • 顔認証システムと連動したクレジットカード決済基盤として活用
  • 認証と決済を一体で処理することで、交通分野に求められるスピードと安全性を両立

実証実験の背景

実証実験の背景

物流業界やタクシー業界では、いわゆる「2024年問題」に代表される時間外労働の上限規制適用や、慢性的な働き手不足により深刻な乗務員不足に直面しています。これはバス業界においても例外ではありません。

村山様 バス会社共通の課題として「いかにして人材を集めるか」というテーマが非常に重くのしかかっています。一方で路線バスは公共の交通機関であり、利益が出ない路線を簡単に減便・廃止できるわけではありません。
加えて、現金決済を維持するコストも事業運営を圧迫しています。
東京都内の路線バスではすでに現金利用率が10%を切っているにもかかわらず、運賃箱のコストの多くが現金処理のために費やされているとも言われています。さらに、営業所での現金集計や釣銭準備など、見えにくい業務負担やコストも発生しており、厳しい局面にあります。

人材確保という経営的な視点と、公共性の維持という社会的な役割。村山様は、この最適なバランスをどう見極めるかが、最も大変なポイントだと強調しました。

村山様 乗務員不足がこのまま進めばいずれは減便やネットワークの削減につながりかねないという危機感のもと、いかに乗務員の負荷を減らし人材を定着させるかという観点で、さまざまな打開策が探られています。今回の実証は、乗務員の負荷軽減と現金決済の低減を図る取り組みとして実施された実証のひとつでもあります。

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実証実験の概要

「手ぶら」移動を支える仕組みとは

本実証は、事前にWeb上で顔写真とクレジットカード情報を登録し、乗車時に車内端末へ顔を向けることで認証・決済が行われます。
関東バスの荻51系統(荻窪駅南口〜シャレール荻窪)の全便を対象に、大人の普通運賃に限定して行われました。定期券利用者や小人・障がい者向けの割引運賃は対象外とし、シンプルな条件下でシステムの有効性と利便性を検証する狙いがあります。

村山様 登録時に取得された顔情報は『特徴量(個人を識別するための個人固有の特徴)』としてサーバー側に保管されるだけでなく、登録から数分後には、バス車内に設置された顔認証機へ事前にダウンロードされる方式が採用されています。これにより、認証のたびにサーバーへ問い合わせる必要がなくなり、通信ラグに左右されず、端末側で即座に判断・決済処理を行うことが可能になります。

交通分野では、わずかな処理の遅れが乗降の滞留や定時運行に影響するため、スピードと安定性の両立は欠かせません。今回の仕組みは、交通決済ならではの要件を踏まえて設計されています。
さらに、乗車時には端末へのタッチ操作を組み合わせることで、意図しない認証や二重決済を防ぐ工夫も施されています。

運転席付近に設置された端末の画面をタッチし、顔を端末に向けて認証する

DGFTの役割

認証と決済をつなぐ中核基盤

DGFTのマルチ決済サービスは、顔認証システムと連動し、利用者の情報をもとにリアルタイムでクレジットカード決済を実行します。認証と決済という異なるシステムを一体で処理し、安全かつスムーズにつなぐことで、「顔を向けるだけで乗車できる」体験を成立させています。

村山様 導入まで非常に厳しいスケジュールの中でしたが、DGFTさまにはクイックかつ柔軟に対応いただきました。生体認証を活用した決済の実装に関する知見もあり、課題を逆算しながら一緒に乗り越えていただけたのが非常に大きかったです。

東京都からの委託決定から実証開始まで約1カ月強という短期間の中で、決済機能の提供にとどまらず、顔認証システムとの接続を前提とした全体設計の中で、どのタイミングで何をクリアすべきかを逆算しながらプロジェクトを推進しました。

村山様 実績も踏まえて全幅の信頼をおいて進めていました。安心してお任せできたと思っています。

株式会社三菱総合研究所 村山様

実証実験の効果

利用者の利便性と、事業者の業務効率を同時に向上

今回の実証を通じて見えてきたのは、顔認証決済が利用者と事業者の双方に価値をもたらす点です。
利用者にとっては、財布やスマートフォンを取り出すことなく乗車できるため、よりスムーズな移動体験につながります。特に、荷物で手がふさがっている場合や、子ども連れ、高齢者にとっては、乗車時の負担軽減が期待されます。
実際、乗務員の業務負荷の一因となっているのが、現金対応や運賃の割引適用、各種確認といった煩雑な運賃収受業務です。こうした対応は乗降時間の増加を招き、定時運行にも影響を及ぼします。

村山様 乗務員にとって大きなプレッシャーの1つが定時運行です。乗降にかかる時間をいかに短縮するかは、日々の運行に直結する重要なポイントです。生体認証決済により、目視チェックやボタン操作の負担を減らせる意義は非常に大きいです。
また、生体認証が普及すれば、利用者属性と決済情報を事前に紐づけることで、本人確認や割引適用といった処理を簡素化し、決済までを一連の流れで完結できる可能性もあります。

こうした観点からも、生体認証決済は単なる決済手段の一つではなく、運行効率やサービス品質の向上にも寄与する可能性を持っています。

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今後の展望

交通の枠を超えた「データ活用による都市計画」へ

今回の実証実験は、顔認証による新たな乗車体験を検証する取り組みにとどまりません。村山様は、その先にあるのは、人々の移動データと消費データをつなげながら、交通ネットワークを含めた都市計画のあり方を考えていくことだと語ります。

村山様 クレジットカード会社が保有する購買データだけではどう移動してきたかはわからず、交通系データだけではその後の消費行動が見えません。「その先でどこに行き、何をしたのか」という情報までつなげてエコシステムを構築していく必要があります。
私たちが目指しているのは、単一の事業者で完結するものではなく、地域というひとつの塊の中で人がどう動くかを分析し、交通事業者の生産性を向上しつつ、その地域に最適な公共交通ネットワークを実現し、自治体や交通事業者、商業施設運営事業者など多様な業種とともに、移動と地域活動を一体で捉えた「都市計画そのものをデザイン」していくことです。

今回の実証は、そうした取り組みに向けた第一歩といえます。
その裏側で、認証と決済をつなぐ基盤として活用されたのが、DGFTのマルチ決済サービスです。

DGFTは今後も、生体認証をはじめとした新たな決済体験の実装を支える基盤として、次世代の移動体験と持続可能な公共交通の実現に貢献していきます。

三菱総研の村山様とDGFT営業担当の山﨑
三菱総研の村山様(写真:右)とDGFT営業担当の山﨑(写真:左)
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※ 2026年5月14日掲載
※ 掲載内容は、本事例の掲載日時点の情報です。
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