国や地方自治体が率先してキャッシュレス社会を推進している昨今、対面での販売チャネルを持つEC事業者はこの課題とどう向き合うべきなのでしょうか。日本のキャッシュレス決済は、政府の推進策や事業者の取り組みにより着実に拡大してきました。経済産業省の発表によれば、2024年のキャッシュレス決済比率は42.8%となり、2025年目標(40%)を上回る水準に到達しています。将来的には80%水準を見据えた政策検討も進められています。
今後、キャッシュレス決済サービスはどうなるのか現在地とこれからをデータをもとにご紹介します。
目次
日本のキャッシュレス決済比率と今後の予測
経済産業省の公表によれば、2024年のキャッシュレス決済比率は42.8%に達し、政府が掲げてきた「2025年までに4割程度」という目標は前倒しで達成されました。
2017年にこの目標が設定された当初、日本は国際的に見ても現金志向が強く、達成は容易ではないと考えられていました。
しかし実際には、ネットショッピングの拡大を背景としたクレジットカード利用の増加に加え、2019年以降に急速に普及したコード決済、そしてコロナ禍で定着した非接触ニーズが重なりキャッシュレス化は着実に進展してきました。
決済手段別に見ると、依然としてクレジットカードが中心的な役割を担っており、コード決済はその次に位置づけられます。QR決済の存在感が目立つ一方で、日本のキャッシュレス基盤は依然としてカードインフラが土台となっている点は見落としてはなりません。さらに政府は将来的に80%水準を視野に入れており、2026年の算定式の見直しによって実態をより反映する新指標が導入された場合、現在の比率が上方修正される可能性も指摘されています。
最新のキャッシュレス決済
エージェンティックコマースの発展
現在の市場は、単に決済手段を増やす段階から、体験をどう設計するかというフェーズへと移行しています。
その象徴が、AIを活用した「エージェンティックコマース」の広がりです。エージェンティックコマースとは、消費者が都度商品を比較・選択・決済するのではなく、AIがユーザーの嗜好や購買履歴、価格条件などを踏まえて最適な商品やサービスを選定し、あらかじめ設定された条件の範囲内で購入までを自律的に完了させる取引モデルを指します。消費者は最終的な許諾や条件設定を行う立場にありつつも、日常的な購買の一部は“任せる”ことになります。
この世界では、決済はフロント体験から後景へと退きます。ユーザーが「どの決済手段を選ぶか」を都度判断するのではなく、登録された支払情報や与信枠の中で、自動的に安全かつ適切に実行されることが前提になります。つまり、決済は操作対象ではなく、信頼の前提条件になります。
ここで重要になるのが、不正対策とリスク管理の高度化です。AIが購買を代行する環境では、人間の直感的な違和感検知が介在しにくくなります。そのため、取引の正当性をリアルタイムで評価する不正検知エンジンや、行動データをもとにしたリスクスコアリング、強固なトークン化によるカード情報の保護が不可欠になります。API連携による柔軟な決済基盤も、エージェント間取引を支える前提条件となるでしょう。
様々なキャッシュレス決済導入事例
「アプリを提示するだけで手軽に決済できる方法はないですか、というお問い合わせを最近かなりいただくようになりました」と話す石垣氏。
同社ではこういった要望に対して、クレジットカード決済と会員管理機能を活用したカードレス決済サービスを提案しており、すでに実用化が広がっている。
三井不動産グループが展開するオフィスビル内のテナント企業向け施設・サービス「mot. 三井のオフィス for Tomorrow」では、専用ウェブアプリを利用して決済ができる。施設利用者は事前にクレジットカード情報を登録しておけば、あとはスマホ1つでサービスを利用することができるというのだ。
「ビル内には会員制フィットネスジムやコワーキングにも使えるオープンスペース、会員制ラウンジがあり、それぞれ、定期的な会費の徴収(継続課金)や、一回利用・備品レンタルなどの支払い(都度決済)が発生します。
フィットネスジムでウエアをレンタルしたり、仮眠室等を利用する場合には、アプリのバーコードを受付の専用端末にかざせば都度決済ができます。ジム内でもスマートフォンを持ち歩いている人は多いので、アプリでの決済は非常に親和性が高いと思います。
また、会員制ジムや会員制ラウンジの会費の徴収も、アプリに一度クレジットカードを登録してしまえば登録カードから毎月決済が行われていきます」。
財布を持ち歩きカードを取り出してサインをして……という今までの決済と比べると、非常にスピーディかつスマートだ。
一方、店舗で商品の購入やサービスを受ける際、自分で支払うといった当たり前の利用シーンとは異なる、新しいスキームのキャッシュレスサービスもはじまっている。株式会社コモニーが手がける電子チケットサービス「commoney」だ。
「バーコード化された電子チケットを発券し、贈ることができるサービスです。受け取った利用者がcommoneyに対応している飲食店やタクシーの端末にバーコードを読み込ませると、そのタイミングで、利用者ではなく、チケットを発券した側のクレジットカード情報から使った分だけの金額が決済されるという新しい仕組みです。 発券者は利用者と一緒にいなくてもおごってあげたり、お使いを頼んだり、タクシーチケットのように使え、使う分だけ代わりに払うことが出来るキャッシュレスサービスです。」
EC業界では、店舗とECサイトのオムニチャネルを手がける企業での活用がはじまっているという。
ECからリアル店舗へ送客してキャッシュレスで支払い完了
EC向け決済サービスからスタートしている同社には、オムニチャネルを手がける事業者から「ECで注文した商品をリアル店舗で受け取るときに決済を行いたい」という相談も寄せられているという。
「EC上ではなくリアル店舗での商品受け取り時に決済したいという場合は、ECでバーコードを発行し、リアル店舗のレジに設置した端末に読み込ませたときに決済されるという仕組みができます」そう石垣氏は説明する。
利用の流れとしては、まず顧客が事業者に提供するアプリにクレジットカード情報を登録。登録されたカード情報はアプリに即時反映される。
顧客はアプリで商品を選んでバーコードを発行したら、リアル店舗に商品を受け取りに行く。受取時にアプリのバーコードを表示して店頭の決済用端末に読み込ませると、登録カードからベリトランス(現:DGFT)の決済システム上にて決済が行われる仕組みだ。
「お客様の利便性を高めたり、来店ポイントの付与など、お客様にとってメリットがある仕組み作りが実現可能です。また、それぞれのチャネルの決済を一緒に管理できるほか、ECとリアル店舗の顧客動向を把握したり、在庫の管理もしやすくなって経費削減もできる。単なる決済手段にとどまらず、マーケティング活用や運営業務の効率化などその先の広がりが考えられます」。
DGフィナンシャルテクノロジーの決済サービスについて詳しく知りたい方はこちら
いずれは生体認証・顔認証決済も。どこでも誰でもキャッシュレスの時代へ
上述した、スマートフォンアプリに登録したカード情報でバーコード決済を行う仕組みは、ベリトランス(現:DGFT)のクレジットカード決済と会員管理機能で実現できる。
「当社は創業当初から事業者様がクレジットカード情報を保持しない、金融機関と同等レベルの高度にセキュアな決済サービスを提供してきました。事業者様にてカード情報を保有せずに決済を完結する機能のひとつとして、カード情報を当社でお預かりし、その代わりに会員IDで決済ができる会員管理機能があります。
任意の会員IDにクレジットカード情報を紐づけ、そのIDをキーにすることでクレジットカード情報を扱わずに決済を実施します。事業者様でカード情報を扱う必要はありませんし、多店舗展開やオムニチャネル展開を実施している場合なども、1つの会員IDのみでさまざまな店舗で買い物いただくことが可能になります」。
本機能を活用した、スピーディなキャッシュレス決済は時間ロスを軽減させるために、スタジアムやテーマパークのチケット売り場、小売大手やホテル、タクシー業界などから導入や検討がはじまっているという。今後はアプリすら立ち上げずに、指紋認証や顔認証など身ひとつで決済できるようになっていくだろう。
「もしコンビニのレジで手をかざすだけで決済ができれば、ランチタイムの大行列が減らせますよね。今まさに多くの企業様がキャッシュレス決済の導入を決定・検討しています。まずは流通の根幹に関わるような大企業様がはじめて、そのノウハウを落とし込み最終的には日本のどこでも誰でもキャッシュレス決済が使えるようになっていくでしょう」そう石垣氏は語る。
また、EC向け決済サービスからスマートフォン決済やオムニチャネル向け決済などリアル店舗向け決済サービスまで幅広くソリューションを提供してきた同社は、カード決済以外にもさまざまな要望に対応することが可能だという。 「クレジットカードを持っていないお客様や海外からのお客様など、さまざまな支払いニーズに対応できますし、多様な決済方法を集約管理できます。ノウハウが蓄積されており、幅広いパートナー網もあるので、即応的なソリューション提案が可能です」と石垣氏は強調する。
多彩な決済手段が求められるEC事業者こそ、これからのキャッシュレス化に無頓着ではいられない。同社では専用アプリや店頭端末を開発するパートナー企業とともに、どう実装していくのがベストか提案してくれるという。ECとの親和性が高いキャッシュレス決済の導入を考えるなら、話を聞いてみるのがいいだろう。